卸売をやっていると、同じ商品でも取引先ごとに単価が違います。A社には7掛け、B社には8掛け、C社だけは個別に決めた単価。これを EC-CUBE でやりたい、という相談をよく受けます。
先に書いておくと、EC-CUBE の標準機能ではできません。 何をどう設定しても無理なので、そこで悩む時間はもったいない。
この記事では、標準でどこまでなのか、よくある回避策がなぜ破綻するのか、プラグインを使うとどうなるのかを順に書きます。できないことも書きます。
標準機能でできること
EC-CUBE 4 の商品は、商品規格ごとに価格を2つ持ちます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通常価格 | 参考価格として打ち消し線で表示するための価格 |
| 販売価格 | 実際に販売する価格 |
これだけです。この価格は、誰がログインしていても同じものが表示されます。
そもそも標準の EC-CUBE には、会員をグループに分ける仕組みがありません。会員に紐づくのは会員情報とお届け先とお気に入りだけで、「この会員は卸売」「この会員は一般」という区別を持つ場所がない。区別を持てないので、区別して価格を出すこともできません。
よくある回避策と、その限界
標準でできないので、みんな工夫します。実際に見かけるのは次の3つです。
取引先ごとにサイトを分ける。 いちばん確実ですが、取引先が増えるたびにサイトが増えます。商品を1つ追加するのに全サイトを触ることになり、在庫も分断されます。3社くらいまでなら回りますが、それ以上は運用が持ちません。
同じ商品を卸価格で二重に登録して、会員限定ページに置く。 商品マスタが二重になります。在庫が別々に減っていくので、実在庫と合わなくなる。価格改定のたびに両方を直す必要もあります。これは早い段階で破綻します。
サイトはカタログにして、受注はメールやFAXで受ける。 現実にはこれがいちばん多い気がします。ただ、それだとEC化した意味が薄い。受注処理の手間は変わらず、価格の問い合わせも減りません。
どれも「価格を出し分けられない」という一点を迂回しようとして、別のところに歪みが出ています。
プラグインで解決する
会員グループ管理プラグインと会員グループ価格管理アドオンを入れると、標準に無かった「会員をグループに分ける」仕組みが追加されます。そのうえで、グループごとに価格を決められます。
価格の決め方は4通りあります。
| 決め方 | 設定単位 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 会員グループ価格 | 商品規格ごとの固定額 | 取引先ごとに単価が決まっている |
| 卸売価格 | グループごとの掛け率 | A社は7掛け、B社は8掛け |
| 割引率 | グループごとの割引率 | 定価から何%引き |
| ボリュームディスカウント | 商品ごとの数量条件 | まとめ買いで単価を下げる |
「A社は基本7掛けだが、この商品だけは個別単価」といった組み合わせもできます。同じ会員に複数当たった場合は、固定価格、割引率、掛け率の順に評価して最初に該当したものが使われます。
運用面で効くのは、割り当てていない商品は制限なしという点です。会員グループを設定していない商品は、これまでどおり全員が同じ価格で買えます。既存の一般向け販売に手を入れずに、卸売用の設定だけを足せる。一般消費者向けと卸売を1つのサイトで両立させられます。
価格以外も揃う
卸売をやると、価格以外にも取引先ごとに変えたいものが出てきます。ここはアドオンで足せます。
| やりたいこと | 対応するアドオン |
|---|---|
| 取引先ごとに買える商品を変える | 会員グループ管理(商品やカテゴリ、ページ単位で制限) |
| 法人だけ請求書払いを使えるようにする | 支払い方法管理アドオン |
| 卸売会員専用の配送方法を用意する | 配送方法管理アドオン |
| 取引先の登録を審査してから開通する | 会員登録承認制アドオン |
| 取引実績に応じて条件を変える | 会員ランク管理アドオン |
全部入れる必要はありません。価格だけなら価格管理アドオンだけで動きます。
できないこと
正直に書きます。B2B でよく求められるもののうち、用意がないものが2つあります。
見積機能はありません。 見積書を発行して承認をもらってから受注、という流れをサイト上で完結させたいなら、開発することになります。
型番を入力しての一括発注もありません。 カタログを見ながら型番と数量を並べて一気に発注する、というやり方が定着している業種だとこれが効きますが、標準にもプラグインにもない機能です。
細かいところでは、割引率と掛け率を同じグループに両方登録することはできません。「定価から何%引くか」と「定価の何%にするか」で考え方が違うため、両方入れると意図が読めなくなるからです。ボリュームディスカウントの値引きがカート画面には出ず、注文手続き画面から先で明細として現れる点も、知らないと戸惑うと思います。
費用の考え方
EC-CUBE 本体はライセンス費用がかかりません。プラグインの価格は製品ページに出ています。サーバー費用は選んだ分だけ。
つまり構成を決めた時点で、いくらかかるか自分で計算できます。 B2B向けのパッケージやサービスは料金非公開のものが多く、商談しないと概算すら出ません。社内で予算を通すとき、自分で金額を組み立てられるかどうかは地味に効きます。
このあたりはB2B ECの選び方をまとめた記事に詳しく書きました。
試すところから
必要なものは会員グループ管理プラグインと価格管理アドオンの2つです。
会員グループを2つ作って、商品に別々の価格を設定して、それぞれのグループの会員でログインしてみる。想定どおり出し分けられるかは、それで分かります。既存の商品に会員グループを割り当てなければ表示は何も変わらないので、動いているサイトで試しても一般のお客さんには影響しません。
カスタマイズ方法や運用中に出てくる細かい話は、このカテゴリの記事にまとめてあります。