ecbeing の B2B ページを読みました。1600サイトの構築実績があり、導入企業にANAやJAL、シマノといった名前が並んでいます。24時間365日の監視と専任担当が付くことも書かれています。
機能も B2B EC で必要になるものが揃っていて、受注管理、見積、型番入力による一括発注、CSVでの一括出荷指示、得意先ごとの価格と販売可否の設定、といったところです。
ひとつだけ、料金が書かれていません。メニューに料金へのリンクはありますが、ページ内に金額の記載はない。つまり商談してから分かる形です。
商談すること自体は普通のことですが、その前にやっておいたほうがいいことがあります。自分たちに本当に必要な機能を洗い出すことです。全部入りの見積もりを見てから削るより、先に要るものを決めておいたほうが話が早い。
その洗い出しの物差しとして、同じことが EC-CUBE でどこまでできるのかを書きます。私は後述するプラグインの開発者なので、そこは差し引いて読んでください。
得意先ごとの出し分け
B2B EC の中心にあるのは「取引先によって見せるものと価格を変える」ことだと思っています。ここは EC-CUBE とプラグインで揃います。
| やりたいこと | EC-CUBE での実現 |
|---|---|
| 得意先ごとに価格を変える | 会員グループ管理+価格管理アドオン |
| 得意先ごとに買える商品を変える | 会員グループ管理(商品やカテゴリ、ページ単位で制限) |
| 得意先ごとに支払方法を変える | 支払い方法管理アドオン |
| 得意先ごとに配送方法を変える | 配送方法管理アドオン |
| 取引先の登録を審査してから開通する | 会員登録承認制アドオン |
| 取引実績に応じて条件を変える | 会員ランク管理アドオン |
| 受注管理 | EC-CUBE 本体 |
| 再発注 | 再注文プラグイン |
会員をグループに分けて、商品やカテゴリ、ページごとに「このグループなら見られる」を割り当てる作りです。割り当てていないものは制限なしなので、既存の一般向け商品に手を入れずに卸売用の商品だけ足せます。詳しくはアドオンをまとめた記事に書きました。
価格は固定額、卸売の掛け率、割引率、数量に応じたボリュームディスカウントの4通りから選べます。法人には掛け率、特定の取引先だけ個別の固定額、といった組み合わせもできます。
作る必要があるもの
正直に書きます。ecbeing のページに載っている機能のうち、見積機能と型番入力による一括発注は、EC-CUBE 本体にもこれらのプラグインにもありません。
どちらもB2Bでは効く機能です。特に型番の一括入力は、カタログを見ながら発注する商習慣が残っている業種だと効率がまるで違う。ここが必須なら開発することになります。
つまり判断はこうなります。
- 得意先ごとの出し分けが主目的 … EC-CUBE で揃う。プラグインの価格は製品ページに出ているので、先に積算できる
- 見積や一括発注まで必須 … 開発費が乗る。ベンダーの見積もりと比べる意味が出てくる
要件を洗い出せと書いたのは、この分岐に立つためです。
値段が見えるかどうか
EC-CUBE 本体はライセンス費用がかかりません。プラグインは製品ページに金額が出ています。サーバー費用は自分で選んだ分だけ。構成を決めた時点で、だいたいいくらか自分で計算できます。
ecbeing は料金が公開されていないので、この計算ができません。それが高いという意味ではなく、規模や要件で変わるから公開していないのだと思います。ただ比較検討の初期段階で概算を出せないのは、選ぶ側からすると扱いにくい。
社内で予算を通すとき、金額を自分で組み立てられるかどうかは地味に効きます。
ソースが手元にあるということ
EC-CUBE はオープンソースです。プラグインもインストールすればコードが読める状態で置かれます。
これが効くのは、想定外の要件が出てきたときです。「この画面のこの項目だけ、この取引先には出したくない」みたいな話は B2B だと必ず出てきます。ソースが手元にあれば、対応できるかどうかをその場で判断できる。できなければ書き換えればいい。
ベンダーのサービスだと、まず「できますか」を聞くところから始まります。できると言われても見積もりと納期が返ってくるまで動けません。この往復が積み重なると、要件を通すのを諦めるようになります。
開発会社も選べます。特定の会社に不満が出たら乗り換えられる。EC-CUBE を扱える会社は多いので、これは現実的な選択肢です。
それでも ecbeing を選んだほうがいい場合
ここを書かないとフェアではないので書きます。
運用を任せたい場合は ecbeing のようなサービスのほうが確実です。24時間365日の監視と専任担当は、自前で用意すると相応のコストになります。EC-CUBE は自由度と引き換えに、開発と運用の体制を自分で持つ必要があります。社内に開発者がおらず、任せられる制作会社の当てもないなら、無理に選ぶものではありません。
止まったときの損失が大きい規模でも同じです。1600サイトの実績と大手企業の導入は、そのまま運用ノウハウの蓄積です。事業の中心がECで、止まると売上が直撃するなら、その蓄積を買う判断は合理的だと思います。
見積や一括発注が業務の中心にあるなら、最初から入っているものを使ったほうが早い。作れば作った分だけ保守も自分たちに乗ってきます。
どう決めるか
こう考えるといいと思います。
- 必要な B2B 機能を書き出す
- そのうち得意先ごとの出し分けが中心なら、EC-CUBE とプラグインで積算してみる
- 見積や一括発注が外せないなら、開発費を足したうえでベンダーの見積もりと比べる
- 運用まで任せたいなら、金額の比較の前に体制の話をする
いきなり見積もりを取ると、比較の軸が金額しか残りません。先に自分たちの要件を持っておくと、どちらを選んでも判断の質が上がります。
EC-CUBE で試すだけなら費用はかかりません。ローカルに立てて、会員グループを2つ作って、価格を出し分けてみる。それで足りるかどうかは1日で分かります。足りなければベンダーに相談すればいい。順番としては、そちらが先だと思います。