月締め請求の記事で、締めたあとに受注を直しても請求は追いかけない、差額を繰り越す処理は入れていない、と書きました。インボイスの記事でも前回でも、返還インボイスは手つかずだと断っています。
同じ穴が3回出てきたので埋めます。
出した請求書は直さない
まず決めたのは、出した請求書に手を入れないことです。
締めた金額を動かさないというのは最初の記事で決めた方針ですが、返品の場合はもっと単純な理由があります。請求書はもう取引先に渡っています。 こちらの画面だけ書き換えても、相手の手元にある紙は変わりません。
国税庁のQ&A(問62)にも、当月分の請求書において当月分の請求金額から前月分の返還の金額を控除する形式が挙げられています。返品は、次の請求で差し引く。 これで進めます。
入力画面を作らない
返品をどう受け取るか。金額を入力する画面を作るか迷いましたが、作りませんでした。
EC-CUBEの受注には対応状況があり、返品はその1つです。締め済みの受注の対応状況を返品にすれば、それが返品の意思表示になります。店舗側で新しく覚えることがありません。
拾う条件は3つです。
| 見るもの | 条件 |
|---|---|
| 請求 | すでにどれかの請求に入っている |
| 返還の処理 | まだどの請求からも差し引いていない |
| 対応状況 | 返品になっている |
3つとも当てはまる受注を、次の締めのときに集めます。受注には請求への参照とは別に、返還を差し引いた請求への参照を持たせました。 1件の受注が請求に2回関わるので、1本では足りません。
差し引いたあと
8月20日締めで6件、¥125,153を請求しました。そのあと1件、¥26,021が返品になりました。9月20日に締めるとこうなります。

9月に売った3件が¥107,440、返還が¥26,021、差し引いて¥81,419です。8月の請求書は¥125,153のまま残っています。 触っていません。
請求書と返還請求書を1枚にする
適格請求書と適格返還請求書は、別々の書類にしなくてかまいません。問62に、それぞれに必要な記載事項を書けば1枚の請求書で差し支えない、とあります。
返還のほうに要るのは、返還を行った年月日、返還の基になった取引を行った年月日、その取引の内容、税率ごとに区分した返還等の対価の額、そして税率ごとの消費税額等か適用税率です。

元の取引の日付と注文番号を出しているのが肝心なところです。 前回、品目と消費税額は納品書に任せると決めました。返還についても同じで、注文番号から元の納品書をたどれば取引の内容が分かります。
消費税額を書いていないのは、返還側の記載事項が「消費税額等又は適用税率」だからです。適用税率だけで足ります。ここは販売分より条件がゆるくなっています。
税額は差し引いてから丸める
問62には、続きがあります。譲渡等の対価の額から返還等の金額を控除した金額と、それに基づいて計算した消費税額等を税率ごとに記載する方法も認められる、というものです。そこに注が付いていて、控除した金額に基づく消費税額等の計算は、税率ごとに1回の端数処理になる、と書かれています。
前回の記事で締め単位に1回だけ丸めると決めたところに、返還が入ってもやることは変わりません。差し引いてから、税率ごとに1回。 順番を逆にして、販売分を丸めてから返還分を丸めて引くと、丸めが2回になります。
| 税率 | 販売分 | 返還分 | 差し引き後 | 消費税額 |
|---|---|---|---|---|
| 10% | ¥88,000 | ¥22,005 | ¥65,995 | ¥6,000 |
| 8% | ¥19,440 | ¥4,016 | ¥15,424 | ¥1,143 |
管理画面に出しているのはこの数字です。前回と同じく社内確認用で、請求書には印字していません。
請求を取り消したときに戻す
請求は取り消せる作りにしてあります。返還を差し引いた請求を取り消すと、差し引いた返還も未処理に戻さないといけません。
戻し忘れると、その返品は二度と差し引かれません。受注には返還を差し引いた請求への参照が残ったままなので、次に締めても対象から外れます。金額が合わなくなったときに原因を探すのが難しい類のずれです。取り消しの処理で、販売分と返還分の両方を戻すようにしました。
この記事で扱っていないこと
部分返品と値引きに対応していません。 拾うのは対応状況が返品になった受注だけで、全額が対象です。一部だけ返す、あとから値引きするといった場合は、金額を入力する画面から作ることになります。実務では値引きのほうが多いと思うので、ここは正直に穴です。
(追記:一部だけ返す、あとから値引きするで対応しました。返還を請求から切り離して作り直しています。)
1万円未満の扱いを分けていません。 税込1万円未満の返還は適格返還請求書の交付義務が免除されるとされていますが、この実装は金額で分けず全部載せます。載せて困るものではないためです。
返品の理由を持っていません。 どの受注が返品になったかは残りますが、なぜ返品になったかは受注のメモを見ることになります。
税理士の確認を受けていません。 根拠は国税庁のQ&Aを読んで書いています。運用するなら顧問の税理士に確認してください。
まとめ
| 決めたこと | 理由 |
|---|---|
| 出した請求書を訂正しない | 相手の手元にある書類は変えられない |
| 返品は次の請求で差し引く | Q&Aに控除する形式が挙げられている |
| 入力画面を作らない | 対応状況の返品で足りる |
| 返還の消費税額を書かない | 適用税率で代えられる |
| 差し引いてから丸める | 控除後の金額で税率ごとに1回 |
4本かけて請求まわりを作ってきて、足した入力は、締め日の欄と締めるボタンだけです。 返品も、金額も、返還の理由も、入力させていません。EC-CUBEがもともと持っている受注の状態を読んでいるだけです。B2Bの改修は画面を増やす話になりがちですが、状態を読む側で済むものは思ったより多いと感じています。